Cutting/Pasting, The fan's wings spin
回る羽根を切る/貼る
SOLO EXHIBITION
会期 : 2022年6月10日 - 6月27日
時間:13:00〜19:00(金月)
11:00〜17:00(土日)
会場 : MONO.LOGUES
東京都中野区中野5-30-16
メゾン小林101
photo : Koichi Nishiyama
この度MONO.LOGUESは、6月10日(金) 〜 6月27日(月)まで、古川諒子による個展「回る羽根を切る/貼る」を開催致します。梅雨の頃、どうぞお気軽にお越しください。
(テキスト/ コーディネート: 奥岡 新蔵 )
「新しいものを生み出すために、自分というものから遠ざかってみたい」と、今回の展示にあたって古川はそう話しています。「自分」とは、言い換えるならば、一つの癖のようなもの。思わず知らず、私たちが持っている知識、とっている行動には何かしら偏りがあるもので、むしろそうやって私たちは生をデザインするわけですが、しかし裏を返せば(そして嫌な言い方をすれば)偏見と偏向に満ちているともいえます。「私」から生まれる発想も行為も、しょせんは「私」から組成されるものに過ぎないと、そんな風にも解釈できます。
今回の古川は、そうした自分というリミテーションを離れた先にこそ新しい絵画があるのではないかという問いを立て、カットアップと呼ばれる、ある特定のテキストを分解し、別のテキストに再構築する文学技法を採用しました。自分とは関係もなく脈絡もない、つまり「私」の外にある言葉を刻み、つなげ、そうして生まれた言葉をタイトルとして設定し、そこを出発点としてモチーフや構図を選び、絵画をつくっていきます。
もともと、古川はステイニングというタイムコントロールの効きにくい手法をとってきました。今回取り入れた手法も同じくアンコントローラブルなものですが、このように作者の指揮権を乱し、弱めるような不安定な状況をあえて生み出し、そこに佇みながら絵画制作にのぞむことが、つまり彼女なりの「自分から遠ざかること」の実践であり、同時に「新しいものを生み出すこと」の実験なのでしょう。
とはいえ、それでも作品に注がれる古川の「私」が完全消滅するかといえば、それはまた別の話。言葉のチョイス、色彩の調整、線の引き方など、一つの絵画において彼女自身のジャッジが下される局面は多々あります。古川も「自分を消す」ではなく「自分から遠ざかる」というニュアンスで話すように、今回の取り組みは、言うなれば画家と絵画という「=」でもないし「≠」でもない、因果のような運命のような、あるいは呪いのような結びつきを、少し俯瞰して眺めることに狙いの一端があるのかもしれません。離れ去ることもできない、かといって一体化もしたくない、「私」と作品の間にある距離感をどうデザインするか、またどのようにして「私」から生まれながらも「私」も知らない、むしろ誰も知らないところで暗くきらめいている絵を掘り起こすか。その問いに取り組む画家の様子が、会場で垣間見えることでしょう。










