しらない土地のしらない人々

2016年より、個人史をテーマに絵画を制作しています。個人史は私や親族が体験した事柄ですが、描き方によりその体験は共有可能だと思い制作しています。

しかしコロナ禍の外出自粛によって他人の生活が注目され、zoomの画面越しにみる他人の部屋や、何を食べ、何を見て、どう暮らしているかに関心が集まりました。その営みは古くから民俗学が扱う分野と似ています。民俗学の文献を読むことで、過去と現在における他人の歴史を追体験することができます。他人の暮らしを覗き見ることは、他人史を知ることと同義でした。

そして民俗学と絵画は多くの共通点を有しています。それは他者と自己、過去と現在、内と外を行き来することのできるメディアであるという点です。さらに「あなたはいまどこにいるのか」という問いをたてる役割があります。

 

今回展示したペインティングでは、愛知の花祭、熊と人間の関わり、そして鹿児島の結婚式についてリサーチしたものを描いています。そこにいる人は会ったこともなく、文献や資料でのみ知り得た人々です。しらない土地のしらない人々を知り、当事者ではない私が絵画にトレースすることで、現在を再認識することが可能か試みます。